top of page

歴史も学べるチューリップ農園

更新日:11月7日


中央上のチューリップがセンペル・アウグストゥス
中央上のチューリップがセンペル・アウグストゥス


はじめに:チューリップは単なる花じゃない


私が"オランダへ移住する"と友人たちに話をした時、皆が口を揃えて言ったのが、"チューリップの国だよね?"でした。初めてスキポール空港に降り立った時、最初に目に飛び込んできたのも、お土産屋さんにずらりと並ぶ色とりどりのチューリップの花束や球根、そしてチューリップ柄のグッズでした。けれど、このチューリップはただ美しいだけの花ではありません。その歴史をひもとくと、17世紀にはオランダ経済を揺るがす“チューリップ・バブル”を引き起こし、現代では世界中に花を届ける巨大産業の象徴にもなっています。実はこのオランダのチューリップには、知られざる深い物語とパワーが秘められています。


ree

チューリップとオランダの不思議な縁


チューリップはオランダ原産ではなく、もともとはオスマン帝国(現在のトルコ)から伝わった花です。16世紀半ば、オスマン帝国駐在大使がチューリップの球根と種子をウィーンに送り、そこからヨーロッパ各地へ広まりました。オランダで本格的に栽培が始まったのは1593年ごろと言われており、ライデン大学の植物学者カロルス・クルシウスが球根を植えたところ、寒さの厳しいオランダでも育つことが分かったそうです。当時のヨーロッパには他になかった鮮やかな色が人々を魅了し、チューリップはたちまち人気を博しました。オランダの気候や土壌にも合致したこの花は、瞬く間に国を代表する花となりました。


1630年代のオランダでは希少なチューリップの球根は富裕層の間でステータスシンボルとなり、人々は「今買えばもっと高く売れるはず!」と投機目的で球根を買いあさりました。球根の価格は瞬く間に上昇し、最盛期の1637年には球根1個がアムステルダムの家一軒と同じ値段に達するほどの狂乱ぶりだったと伝えられています。中でも「センペル・アウグストゥス」という珍種の球根には、なんと5ヘクタールの土地と交換しようという申し出まであったとか。しかし熱狂は長く続かず、市場はある日突然崩壊。球根価格は暴落し、高値で掴んだ人々の多くが大損失を被りました。世界初の投機的バブル経済の崩壊として、この出来事は今も経済史の教科書に登場します。こうしてチューリップは、オランダ文化の象徴であると同時に、世界経済にも影響を与えた特別な花として歴史に刻まれました。

なお、チューリップには赤・白・黄だけでなく本当に様々な色・形の品種があります。17世紀当時からすでに珍しい模様の品種が珍重されましたが、現代では数千種類にもおよぶ品種が国際的に登録されており、今も毎年新しい品種が生み出されています。私たちが普段目にするチューリップはほんの一部で、まさに多種多様なバリエーションが存在するのです。


様々な展示と解説
様々な展示と解説

チューリップ農園でできること


オランダのチューリップ観光といえばキューケンホフ公園が特に有名ですが、今回ご紹介するのは、学び+体験+写真映えの三拍子がそろった私のお気に入りの体験型のチューリップ農園です。ちなみに、場所はキューケンホフ公園のすぐ近くです。


歴史展示エリア: 農園の屋内には小さなチューリップ博物館があり、17世紀のチューリップ・バブルの資料や、オランダが花卉(かき)輸出大国になるまでの発展史がパネル展示されています。チューリップがいかに経済と深く関わっているかが分かりやすく解説されており、初めて訪れた際はその「花と経済の関係」に驚きました。またチューリップの原種や品種改良の歴史、赤・白・黄だけじゃない多彩な品種についても学ぶことが可能です。


農家の舞台裏: 農場で実際に使われてきた昔ながらの農機具や、現在の栽培に使われている機械が展示されており、チューリップ農家の裏方を見ることができます。球根の選別・保管方法、植え付けから収穫までの工程など、「美しい花畑の裏で支える農業の努力」を知る貴重な機会です。最新技術と伝統的手法の両方を垣間見ることで、花を支える生産者の工夫に感心するはずです。


花畑での体験: ここからが、本当のお楽しみ!扉を開けて、屋外に一歩出ると、目の前には色とりどり400万本ものチューリップが咲き誇る広大な畑が広がります。なんと700種類以上の品種が植えられており、先ほど展示で見た珍しい品種を見つけるのも楽しいです。どこまでも続くカラフルな花畑はまさに圧巻で、いくら写真を撮っても撮り足りないほどです。ブランコやレトロな自転車、巨大な木靴などフォトスポットも満載で、インスタ映えも間違いなし!


カフェで休憩: 一通り花畑を楽しんだ後は、併設のカフェでひと休みもできます。可愛らしいチューリップ型のケーキやオランダ風の焼き菓子など、ここでしか味わえない花スイーツも。


チューリップのお土産: ツアーの最後にはとってもうれしいお楽しみがあります。専用コーナーから好きなチューリップを数本選び、お土産として持ち帰ることができるのです。ホテルの部屋に飾れば一気に華やぐこと請け合いです。

この体験型農園の見学ができるのは、チューリップの開花時期である毎年3月下旬から5月上旬までの約2か月間だけ。特に日本のゴールデンウィーク(4月末〜5月初旬)の頃は花畑が最も見頃でおすすめです。限られた季節のチャンスにぜひオランダを訪れ、この農場でしか味わえないチューリップ尽くしのひとときを体験してみませんか?



オランダ花卉産業のスケール感


オランダには世界最大規模の花市場があります。巨大な倉庫のような建物の中で、花が乗った無数の台車が所狭しと行き交い、上階の見学通路からはその壮観な物流の流れを一望できます。このアールスメール市場では毎日約4,300万本もの花が競りにかけられており、世界中から集まった花が売買されています。取引量は特にバレンタインや母の日シーズンにはさらに増えるそうです。競りは伝統的な「ダッチ・オークション(降下式競売)」方式で、最初に高い価格が提示され徐々に下がっていく中、買い手が適切と思う時点でボタンを押して競り落とす仕組みです。早朝の競りで買われた花は数時間以内に世界各地へ発送され、その日の午後にはパリやロンドンの花屋に並びます。日本では横にして運ばれることが多いですが、オランダでは立てたまま水に浸けて運ばれ、どこの店で購入した花もとてもフレッシュで花持ちがいいそうです。


オランダが「世界一の花の国」と称される所以は、その圧倒的な流通規模と国民の花好きな文化にあります。アールスメールをはじめとするオランダの花市場には、世界中で流通する切り花の約6割が集まるともいわれます。またオランダ人は日常的に花を飾る習慣が根付いており、一人当たりの花の購入額は日本人の約4倍にも上るとのこと。街を歩くと、多くの家の窓辺に季節の花を生けた花瓶が飾られ、レストランやカフェにも旬の花が飾られています。友人から花をプレゼントしてもらうことも多いです。


春にオランダへ旅行する際は、ぜひチューリップ農園の見学ツアーや花市場の訪問も旅のプランに加えてみてください。

きっとオランダのチューリップが持つ歴史とスケールの大きさに触れ、旅の思い出が一層特別なものになると思います。


チューリップ農園で娘と。
チューリップ農園で娘と。

 
 
Kosaku NL

Kosaku NL

会社名:Kosaku NL

    (コウサク オランダ)

所在地:デン・​ハーグ,オランダ 

KVK:97420166 

(オランダ商工会議所)

日本本社:株式会社コウサク 

     熊本県山鹿市

  • スレッド
  • Instagram

 

© 2025 by Kosaku NL 

 

bottom of page